「新築だから10年保証がある」は、たぶん誤解です
シロアリのまわりには、期間の似た制度がいくつもあります。 品確法の10年、防蟻工事の5年、住宅性能表示の等級——それぞれ守ってくれる範囲が違うのに、 同じものとして説明されることがあります。順番に切り分けます。
1. 品確法の10年は「瑕疵」に対する責任です
新築住宅の売主等は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)にもとづき、 構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分の「瑕疵」について、10年間の担保責任を負います。 2009年10月施行の住宅瑕疵担保履行法により、売主等には保険加入または供託による資力確保も義務づけられました。
これは「入居後のシロアリ被害を10年保証する制度」ではありません
対象になるのは引き渡しの時点で存在していた瑕疵です。 入居後に発生したシロアリの被害そのものが、当然に補償されるわけではありません。 防蟻処理の施工に不備があったなど、瑕疵と認められる事情があれば責任を追及する余地がある、 というのが正確な理解です。
2. 防蟻工事の5年保証は、民間の保証です
施工業者が付ける5年保証は、法律の制度ではなく業者と施主の契約です。 期間が5年になっているのは、公益社団法人 日本しろあり対策協会が 「5年を超えて長期間有効な薬剤は環境によくないと考えており、認定薬剤の有効期間を5年としている」 と説明しているためです。協会の防除施工標準仕様書も「五年を目途に再処理をする」と定めています。
保証書は必ず受け取り、期間・対象範囲・再発したときにどこまで無償かを確認してください。 口頭で「10年保証します」と言われた場合も、書面に何と書いてあるかがすべてです。
3. 建築基準法は「防腐は義務、防蟻は必要に応じて」
建築基準法施行令第49条第2項は、次のように定めています。
「構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から一メートル以内の部分には、 有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための 措置を講じなければならない。」
つまり防腐措置は義務、防蟻措置は「必要に応じて」という書き分けです。 日本しろあり対策協会は「シロアリが生息している地域では実質的に義務付け」と解説していますが、 条文上は全国一律の義務ではありません。
なお、国土交通省の補助事業として行われたシロアリ被害実態調査の報告書自身が、 「建築後一定期間を経過した木造住宅において『必要に応じて』を判断することは非常に困難です」 と述べています。既存住宅で誰がどう判断するのか、という論点は残されたままです。
4. 住宅性能表示の「劣化対策等級」
新築やリフォームを検討している方は、劣化対策等級3の仕様が参考になります。 国土交通省の評価方法基準では、木造の等級3におおむね次のようなものが求められます。
同じ報告書は、品確法の劣化軽減等級3・2で北海道・北東北地域のシロアリに対する地盤対策が免除されている点について、 これらの地域でも被害が一定の割合で報告されているため今後再検討する必要がある、と提言しています。 寒冷地は対策不要、という前提は見直されつつあります。
5. 中古住宅を買う・売るとき
2018年4月施行の宅地建物取引業法の改正で、既存住宅の売買では 建物状況調査(インスペクション)のあっせんの可否を媒介契約書に記載し、 調査を実施した場合はその結果の概要を重要事項として説明することになりました。
調査は国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者(建築士)が、国土交通省告示の 「既存住宅状況調査方法基準」にもとづいて行い、木造では蟻害・腐朽が調査対象に含まれます。 買う側にとっては、床下の状態を専門家に見てもらう機会になります。
売る側は、把握しているシロアリ被害を物件状況確認書(告知書)で買主に伝えるのが実務です。 隠して売ると、あとで争いになります。売却を考えているなら、 先に調査して直しておくほうが結果的に有利なことが多いです。
6. 補助金は、原則ありません
シロアリ駆除そのものを対象にした補助金・助成金は、全国的にほとんど設けられていません。 業界団体である日本しろあり対策協会も、公式FAQで 「直接の補助金はありませんが、シロアリ駆除にかかった費用は確定申告で雑損控除できます」 と回答しています。
自治体の住宅リフォーム補助金でも、シロアリ駆除は補助対象外と明記している例が見られます。 数少ない例外として、福島県金山町が対象害虫にシロアリを含む害虫駆除事業補助金を設けていますが、 これは例外であって、一般化できるものではありません。
現実的な選択肢は税制のほうです。駆除費用と被害箇所の修繕費用は雑損控除の対象になります (予防費用は対象外)。詳しくは 駆除費用と税金の解説 へ。
7. 火災保険は、約款によります
シロアリ被害が火災保険の補償対象になるかどうかは、契約内容によって異なります。 当サイトでは可否を断定しません。保険証券と約款を手元に置いて、 加入先の保険会社・代理店に確認してください。
「保険を使えば自己負担なしで工事できる」といった説明で契約を勧める業者には注意してください。 保険金の請求は契約者本人が行うものです。訪問営業への対応は 点検商法の見分け方 にまとめています。
出典: 国土交通省「住宅瑕疵担保履行法」/ e-Gov法令検索「建築基準法施行令」/ 国土交通省「劣化対策に係る評価方法基準案の検討」/ 同「既存住宅状況調査方法基準の解説」/ 日本しろあり対策協会「シロアリ駆除に関して補助金などはありますか」/ 同「保証は5年となっていますが、なぜなのですか」